はじめに
日本では、原子力発電所で使い終えた燃料を再処理してウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料として使うことにしています。この過程で残った再利用できない成分をガラス固化した高レベル放射性廃棄物や関連して発生する半減期の長い核種を含む低レベル放射性廃棄物はその放射能が十分低くなるまでには長い期間を要します。日本では、これを人間の生活環境から長期間にわたり隔離するために、深い安定した地層中に処分すること、すなわち地層処分をすることにしています。
この地層処分事業の実施主体として「原子力発電環境整備機構(NUMO:ニューモ)が設立されており、(一財)日本日本原子力文化財団は、NUMOの委託を受け、地層処分について理解を深めたい地域団体に地層処分に関連する施設の見学や勉強会などの開催を支援しています。
シニアネットワーク(SNW)東北では、対話活動を行っている学生さん達に地層処分をよりよく理解して頂く「若者と地層処分を学ぶ会(東北)」を立ち上げ、支援活動に参加しています。
学習支援事業 2023年度チラシ
活動実績
“若者と地層処分を学ぶ会(東北)”は、2016年に立ち上げられ、以来、2023年度までで学習支援事業に延べ8回参加しています。また、学習支援事業に関わった活動団体の交流を図る全国交流会、地域の交流を重視した各ブロックごとに開催した東北ブロック交流会などにも参加しています。活動状況は以下の通りです。(項目をクリックで詳細表示)
- 第8回目:2023年11月30日~12月1日 原燃サイクル施設(原燃 PR センター含む)
- 第7回目:2022年11月17日~18日 原燃サイクル施設(原燃 PR センター含む)
- 第6回目:2021年10月20日~21日 幌延深地層研究センター
- 第5回目:2020年11月19日~20日 日本原燃、エネルギーパーク
- 第4回目:2019年12月3日~4日 核燃料サイクル工学研究所・東海第二発電所
- 第3回目:2018年11月1日~2日 日本原燃、エネルギーパーク
- 第2回目:2017年11月1日~2日 JAEA幌延深地層研究センター
- 第1回目:2016年12月7日~8日 JAEA幌延深地層研究センター
参加者の感想
2023年度 原子燃料サイクル関連施設の見学会の感想
2022年度 原子燃料サイクル関連施設の見学会の感想
2021年度 幌延深地層研究センター訪問時に頂いた感想【8ページに掲載】
2020年度 六ヶ所村日本原燃を訪問時の感想【11ページに掲載】
あとがき
地層処分を理解するための学習支援は、高レベル放射性廃棄物の地層処分を通じ、エネルギー問題などをより広く、深く知る非常に良い機会だと思います。
“若者と地層処分を学ぶ会(東北)”では、皆さんに地層処分を知ってもらう学習支援に参加するお手伝いを行っております。
来年度も、同様の活動が企画されると思いますので、是非参加を検討してください。その節は、HPで募集を行います。
若者と地層処分を学ぶ会(東北)代表
SNW東北 副代表幹事
山 田 信 行
地層処分って何?
(1)原子燃料サイクル
原子力発電所で使用された後の燃料(使用済燃料)の中には、核分裂していないウランや、原子炉内で生まれたプルトニウムが含まれています。これらは再処理して取り出し、燃料として再利用すること、つまりリサイクルすることができます。ウラン燃料をリサイクルして利用する一連の流れを「原子燃料サイクル」といいます。この過程で残った再利用できない成分をガラス固化した高レベル放射性廃棄物や関連して発生する半減期の長い核種を含む低レベル放射性廃棄物はその放射能が十分低くなるまでには長い期間を要します。これを人間の生活環境から長期間にわたり隔離するために、深い安定した地層中に処分する方法が地層処分です。
(2)放射性廃棄物の種類と処分方法
放射性廃棄物は、発生源や強さにより、原子力発電所で発生する低レベル放射性廃棄物や再処理施設で発生する高レベル放射性廃棄物などいくつかに分類され、処分方法が異なります。
使用済燃料を再処理する工程で発生する高レベル放射性廃棄物は、ガラスと融かし合わせて固めたガラス固化体として処分します。
高レベル放射性廃棄物の処分方法の検討
(3)地層処分について
地層処分とはこの高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)を地下300メートルより深い地層に埋設することです。※使用済燃料を再処理せず、直接地層処分する国もあります。(スウエーデン、フィンランドなど)
この「地層処分」とは、地下深くの岩盤が持っている「物質を閉じ込める力」を利用し、地下深部の安定した岩盤に高レベル放射性廃棄物と地層処分相当低レベル放射性廃棄物を埋設し、人間の生活環境に影響を及ぼさないように長期にわたって安全・確実に隔離し閉じ込める方法です。
地下深部には以下の特徴があるため、物質を長期にわたり安定して閉じ込めるのに適した場所といえます。
<人間の生活環境からの隔離>
地下深部は、地上に比べて、地震、津波、台風などの自然現象による影響がほとんどなく、戦争、テロなどの人間の行為による影響も受けにくいという特徴があります。
<物質が移動しにくい環境>
地下にある物質は主に地下水によって運ばれますが、地下深部では地下水の動きが年間ミリ程度と極めて遅いため、物質の移動も非常に遅いという特徴があります。また、多くの物質は岩盤に吸着されやすいという性質があるため、地下水によって運ばれる物質の動きは地下水の流れよりもさらに遅くなります。
<物質が変化しにくい環境>
地下深部の地下水中の酸素は極めて少ないため、錆びなどの化学反応が抑えられ、金属を腐食させにくく、ものを溶かしにくいという特徴があります。
一方、地上は地下に比べて自然災害や人の行為の影響を受けやすいため、高レベル放射性廃棄物を数万年以上という長期間にわたり人間が管理し続けることは、社会的、経済的なリスクの観点から適当ではありません。
原子力発電を利用してきた現世代が処分の道筋をつけることで、将来世代が管理する負担をできるだけ小さくすることが、世代間倫理の観点からも適当と考えられます。
こうした考え方に立って、世界各国及び国際機関などで様々な処分方法が検討されてきました。その結果、地層処分が最適であるとの認識が国際的に共有されています。
(4)人工バリアと天然バリア
この地下300メートル以上という地層の「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせた多重バリアで、長期にわたり放射性物質の動きを抑え閉じ込めます。
「人工バリア」は厚さおよそ20センチの金属製の容器と水を容易に通さない緩衝材(粘土(ベントナイト))より構成されます。オーバーパックの表面での放射線量は裸のガラス固化体のおよそ一万分の一(~1/10,000)以下に減衰されます。
【地層処分のイメージ図】
NUMO HPから引用